Archive for July 19th, 2011

July 19th, 2011

『デプリム』

季節の風物詩2〜je suis comprétement déprimée、もうダメ!

二月の風物詩は la déprime『デプリム』、”プリンを型から外す事”かな?料理の専門用語みたいなこの単語、実は気持ちの落ち込み、鬱のことを指す。

パリにいてふと意地悪な自分に気付く。しんどいのだな、と自覚する瞬間だ。通勤帰りのメトロの中だった。

パブに来たのと間違っているんじゃないか?と思うくらい大きな声で話す、縦にも横にもでっかいドイツ人観光客達が、ドカドカ車両に乗り入れて来て、それはもう楽しそうにはしゃぐのだ。心からそいつらに嫌悪を感じて、お願いだから消えて欲しいと心で願った。だけど、私の心は弱りきっていたので怒り続けることさえ不可能で、次の瞬間には涙が溢れていた。確かに迷惑な人達で、何を話しているのか解らないのも癇に障るし。だけどそれより心から楽しそうなのが気にくわないなんて、そんな自分がどうしようもなくて。もうダメ。泣いた。泣いたり、意地悪したり、されたり、文句を言ったり、言われたり。これが2月の風物詩だ。

それというのもパリの空がいけない。智恵子じゃないけど冬のパリには空がない。私のほんとの空には少なくともお陽さんがある。一冬中なんとか持ちこたえた心も、二月に来てもう限界。

ともかく泣いたり、怒ったり、叫んだり、そういう人間的な反応は何かある度毎に出しておくに限る。これが完全に落ちない秘訣だから。でもできれば笑って過ごしたい。

身近で手軽な笑いに、フランスのコメディー映画を紹介することにする。一般的なフランス映画のイメージからは思いも拠らない面白さがある。それにおフランスの”笑い”は鬱対策にかなり有効だ。フランスでは映画に限らず、権威のあるもの程ブラッグユーモアの対象として狙われ、多いに笑われるはめになる。そんな皮肉の効いたフランスの”笑い”が心を癒す。

まずパリ、クリスマスを舞台にした映画『Le Pére Noël est une ordure』サンタのコスチュームをしたホームレスが滅茶苦茶をして周りに大迷惑をかける話。建前と本音が交錯する会話が可笑しい。家柄良し、服装も良し、上品な話し振りの紳士、だけど彼のカトリック慈善活動は見せかけ。育ちの良いその同僚、でもその実態は色気ずいてるかまとと。親切で一見かんじのいいホモセクシャル、だけど不幸ぶりがうざったい。無害そうな外国人の隣人、だけど空気を読まないし、不思議な食べ物を持参する。
お近づきになりたくない人物大図鑑といったとこだけれど、実はこういったタイプはそこら辺中にゴロゴロいる。例に出した最後の外国人なんか、自分でもきれいにはまって、陰で文句を言われてかねない。たとえ親切心でも、保守的なタイプで暇なフランス人相手なら、例えば羊羹などをお土産に持参しない方が身のためかもしれない。おしゃべりのかっこうのネタにされてしまう。既に記した通り1月ならガレットだ、2月に入ってもまだダラダラと売っているのでそれで十分、好意は伝わるし無理矢理に美味しいと言わせる事にも無らない。

次に『東方の三博士』ピント来ただろうか?ガレットの由来になった3人組だ。その名も『trois rois mages』[トワ ロワ マージュ]で意味そのまま。聖書に登場する3人が、現代に現れて赤ちゃんのイエスを探すお話。三人三様に、聖書が語る彼らの人物像に「自分はそんなのと違う」と異議を唱えたりする。ブラッグユーモアたっぷりで、カトリックを随所で皮肉っているのが面白いのだけれど、教会が抗議したりしないのかと思わず心配してしまう。

戦争だってコメディーになって皮肉られている。『La vache et le prisonier』には、まったくやる気のないフランス人兵士、まじめすぎて機転の利かないドイツ人兵士、長いものには巻かれろ主義でおべっか使いの商人などが登場する。ドイツ軍に捕まったフランス人捕虜が牛とフランスに逃げ帰る話。潔くよくお国のために死ぬより、適当に巧く切り抜ける方が性に合うと宣言している。

『Soupe aux choux』は、おならで宇宙人と交信して、キャベツのスープで惑星に革命を起こす話。フランス人は革命を誇りに思ってるから、宇宙でもフランス人が出かけて行って活躍するつもりなんだろう。バカバカしい設定の中に田舎の開発や、意味なくあるお金や、若さや、まじめすぎる事らへの皮肉と批判精神が溢れている。宇宙人との交流も、フランス人が描くと隣人をもてなすのと大して変わらない。庭で穫れたキャベツのスープにワインで十分!農民にとっては宇宙人も外国人みたいなもんで、プルプルプル、プル!しか言わない宇宙語に、合いの手をうって「そうだろ、うまいだろう!」これで解り合えている。

フランス映画ならコメディーに限る。おしゃれじゃないのもいい。

おしゃれと言うと、塞いだ心へビジューティエだけに提案したいのはキラキラしたものを身に着けること。そうすれば、天気が悪くても自家発電のごとく光を放って身近な人も喜ぶ。”君は僕の太陽だ”とは良く言ったもので、実に的を得ている。だから、自分のパートナーに贈って着けてもらうのもいい。それにキラキラしたものをプレゼントされたら太陽の機嫌が良くなること請け合い。

そうですねお勧めは、キラキラの王様ダイヤモンド、太陽を思わせる黄色のシトリン、アンバー等でしょうか?これをペンダントやブローチにして、皆に見えるように着用しましょう。
騙されたと思ってやってみるべし、泣いたやつが言うのだから。キラキラしたものが2月の風物詩に加わる時は近し。

プチフランス語講座:la déprime[デプリム](落ち込み、鬱)
le diament[デイアモン](ダイヤモンド)

July 19th, 2011

『ガレットデロワ』

季節の風物詩1〜大人も子供も盛り上がる

一月の風物詩はお菓子のgalette des rois『ガレットデロワ』。

お正月明け、街中のパン屋さんにいろいろな大きさのガレットが所狭しと並べられる。紙で出来た金色の王冠のデコレーションが存在感を発揮する。またガレットの季節が来たなとしみじみ、ガレットデロワはアーモンドの練り物が入ったパイ。皆で切り分けて食べる。中に陶器の小像、フェーブが隠してあり、宛てがわれた分にそれが入っているとその場の王様になるという趣向付き。人数に合う大きさのを用意し、学校で仕事場で家庭でといろんな所でいただく。

お待ちかねのでデザートの時間、子供はうれしそうにテーブルの下へ潜り込む。ん?こうやってケーキが見えないようにしてから、切り分けたのが誰の物か指定するの。なるほど。「これは誰の?」「それはママの」「じゃあこれは?」「僕の!」そしてなぜか”僕”のや”私”のにフェーブが入っている。
だからこんな愉快な日には、どうぞいたずらをして両親に怒られないようにして欲しい。じゃないとデザートが罰としてお預けになってしまう。”デザート無しですよ!”フランスではこうやって両親は子供を躾けるのだ。でもそうなったら大人だってがっかりだ。

ガレットを食べて自分のケーキにフェーブが入っていたら、王様なので冠をかぶって直ちに命令しよう。「パトロン、月給の支払額の末尾にゼロを一つ増やしなさい。」そうしたら、田舎に大きな庭の付いた家を買う。

ガレットは皮はパリパリ、中はしっとりが美味しい。毎年、その年のガレットベスト1とワースト1が選ばれる。日本でもフランスでも有名なパン屋P***がワースト1に選ばれてた年もあったかな…。

お味は重要だけど、それはさておき興味津々なのはフェーブの方。せっかく手元に来たフェーブ、お口の中で発見するかもしれないが、こってり系の餡がしっかり貼付いているのでそれをこそぎ取って、そして良く見てがっかり。あるいは、とっても素敵で「ワー」なんて周りから歓声もあがり、でもどこかからか「妻がコレクショナーなんだ」なんてのも現れて欲しいとせがまれる。

もし私がフェーブのデザインをするなら、…大好きな椿の花をモチーフに、色とりどりでキッチュ、シンボリックでエキゾチックなフェーブを提案する。真っ赤な一重の薮椿、ピンク地に白い絞りの八重、筒芯の黄色が映えるまあるい白椿…フランス人マダムも「カメリアジャポネ!」なんてうっとり夢中になるはず…もちろんかわいいアクセとしても使えるように紐を通す穴もつけるつもり。
…それから、そう!別のアイデアも浮かんだ!肌の色や、目の色、髪の色の違ういろんな赤ちゃんモチーフのフェーブもかわいい!バラ色の頬に明るい緑茶色の目の男の子、褐色の肌に丸いちいさな鼻、眠っている女の子…
そして…そして、これ以上は本当に依頼されてから続けるとにしましょう。例えばLADUREEとかに!パティシエLADUREEは様々な分野のデザイナーとのコラボレーションでいつも楽しませてくれている。最近ではラクロワ、ルブタン、マルニ、セファラ。

それからビジューティエとして見逃せない話の種は、新しいタイプの特別なフェーブについて。クラッシックなフェーブは陶器製、でも最近では金属製フェーブの入ったガレットデロワが売れ出されて、”ダイヤモンドのフェーブ”なんていうのも話題になった。でも実はフェーブがダイヤモンドの引換券になっていただけでダイヤがお菓子の中に入っているのでは無かった。「なんだ、夢のない」とがっかりしたもんだけど、そんなことならいっそ、本当にダイヤモンドジュエリーを入れたとびきりLUXなガレットデロワがあっていい。本末転倒の発想ではあるけれど、本物のジュエリーがフェーブに変身すればストーリが出来て面白い。フェーブが先でもジュエリーが先でも、どちらにしても大切なのは遊び心。
また金属製フェーブなら、金の板にマリア様のようなクラッシックなモチーフをサラリと彫ったものはどうだろう。適度な伝統との距離感は道楽をも上品な趣向に仕立ててくれる。シックなパーティーに。

ちなみに、最後の最後になってしまったが、このガレットデロワ、そもそもの由来はさかのぼることクリスマス。キリスト生誕にあたり3人の王様 ”東方の三博士” が贈り物をもってお祝いに駆けつけた事に端を発する宗教行事なのだ。皆パイを食べてこの行事を楽しむわりに、その背景についてあまり知らないのだけれど。

プチフランス語講座:le camélia[カメリア](椿)