プロフェッショナルな世界のこと1〜D***、ブリンッBリンッ
”J’adore D***”、フランス語なんて出来なくても解るはず。それくらいこのコピーは氾濫していて、そして、いつ聞いても苦笑を誘う。
こんなD***joaillerieのビジューコレクションの魅力は悪趣味につきる。わざと伝統的な趣味の良さや、エレガンスを避けてくる。ギリギリまでボリューム感を効かせてブリンッとやるのがD****っぽいというか、créatriceV*******好みか。デザイン、細工、石と、ビジュー製作に於ける全ての要素のクオリティーを、一定の水準に保つ本物のジョワイエリーがやるからこそかっこいい。保守的になりがちなジョワイエリーの世界だが、その中で抜きん出た存在。勢いを感じる。
アトリエの仕事で手掛けたD***のコレクション用の指輪、やはり、例外的に大きくブリリリンとミカン大。こんな指輪をつけた日には、肘掛けの付いたフカフカのソファーに腰掛けて、手にビズを貰うくらいしかできない。ところでこの指輪、もう随分前に製作を開始したものの未だに完成していない。というのも、コレクション用のビジューは、何度も変更や調整が行われるので最後の最後までどうなるかわからない。その上、これには前例の無いちょっとした仕掛けがあって、仕事は難しかった。それにしても、あまりにも時間が経ちすぎているように感じるこの頃である。完成した姿をみるのが楽しみなのだが…。
あれはかれこれ2年程前に一度私の手元を離れ、そして消息を断った。その後忘れた頃にボロボロの姿で戻って来ては、また出て行ってを繰り返し、最近になってまたアトリエで再会した。いくつかの計画の変更が伝えられ、今後は完成に向けて進む予定らしい。ずっと気にしていたので、知らせを聞いてほっとする。でも、どうしていたのか?何があったのか?ボスに訊ねてみた。が、結局のところ、あまりにややこしい事情が重なりすぎていて、追求しない方が良さそうな雰囲気…。
つまり、ビジューだって世間にもまれることがあるということだ。人の私が何十年後かにこの世からいなくなっても、彼の方はまだまだ顕在のはずだし、またそうであってほしい。だからこの2、3年の、私にしてみれば心配し、また少しイライラさせられた空白の期間も、彼の人生にしてみればたいした年月ではない。もしかしたら、人知れずひっそりゆっくり寝てたい時であったのかも。どこで何がおこなわれていたのか?私には知る由もなく。人もビジューも熟成されて育つ。
プチフランス語講座:J’adore ~ [ジャドー](とても好き)
créatrice [クレアトリス](女性の作家デザイナー)
bijoux[ビジュー](宝石、装身具)