『ジブレ』

季節の風物詩3〜春雨じゃ濡れて行こう?

三月の風物詩は giboulée『ジブレ』、この宮崎アニメのような単語の意味は通り雨。そして3月のジブレ『ジブレドマース』は春を告げる雨。つまり春雨なんだけど、日本のように柔らかな霧雨じゃなくてもっと激しい。

にわかに空が暗くなって強いシャワーのような雨を浴びる、と思いきやすぐに降りやみ黒い雲間から青空と光が差し込んで、そこら辺がキラキラ、雨に濡れてしっとり、これがジブレ。けっこうドラマティック。風流なんだけどしみじみ出来ない。
ジブレに遭遇すると軽くビシャ濡れだけどあはは!というかんじ。というのもすぐに乾くし、少し濡れた髪に水滴が光って人も素敵に見えるし、何より春が来てるという実感が心をはしゃがせる。瞳もキラキラ輝くってもんだ。

ジブレのこの急展開具合は、ヨーロッパの春の始まりに相応しい。そんなふうに長かった冬も一気に暖かく明るくなる。暗く重いどん詰まり状態は、2月にピークをむかえもうどうしようもないっと悲鳴を挙げたとたん春の通り雨に会って、そこら中輝いてサマータイム突入でもうバカンスか、仕事帰りにカフェのテラスでビールでも、となるわけ。

おまけに、ジブレの後雲間から差し込む光がまた神々しく美しい。救われた気分…なんちゃって、でもそんなかんじになる。しかし救い、なんて甘美な響き。誰に救われたのか知らないけどこのかんじに骨抜きにされると、辛かった冬なんか元々無かったかのように感じる。来年も確実にやってくるのは知っているのだけど。

そういえば…蟻とキリギリスなんてお話もありましたね。何事に関しても浮き足立った気分を戒めるのは簡単ではない。でも次の”辛い冬”を乗り切るため、以前にも書いたけれどフランスのコメディー映画2、3本も用意しておくと良いのでは、出来れば今のうちに。”備えあれば憂い無し”と言う、けど本当かな?

備えるといえば、傘。フランス人は傘をささない、結構な降り具合の時でも。濡れながら「関係ない」と言わんばかりにタバコに火を付ける。「そんなもんさしてられるか!」ですか?確かに傘を携帯するぐらいなら防寒用にストールか、上着をもう一枚持って出かけようかなと思う。確信犯で傘を家に置いて来る。備えない。そのうち、必要だと探してみてもろくな傘しか見つからないし、いざ出先でさしてみても壊れているか、又すぐ壊れる。軽く風に煽られたと思いきや、さして抵抗なくビニールはベローンと折り返り、骨もグイッッツと折れ曲がり…お見事ブラボー。少し高めの傘を買ってみたんですけどね、困ったことだ。!わかった。そもそもまともな傘がお店に売ってないのが良くない、そう、備えるなんてバカらしい。濡れて行こう。

でも本物の大雨の時、皆が一目散に走って行く中「私は持ってるの」なんて悠々と傘をさすのも好き。鞄からさっと取り出してシャキーン、ベローン。

プチフランス語講座:les giboulées de mars [ジブレドマース]


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