『それはまるで舞台のよう』

プロフェッショナルな世界のこと2〜J**、top top

昔、パフォーマンスに関り、舞台美術をしていた頃にぼんやりと思った。”スペクタクルみたいな”展覧会 があれば面白い。でも、具体的なアイデアは何も無く、イメージだけがあった。まだビジューに関わる前の話。”スペクタクルみたいな”それは、こんなかんじ。

舞台はお客さんとの待ち合わせ、その時に集うかんじが喜びとなる。舞台上から、舞台裏から、そして客席から、それぞれの気分が一時に持ち寄せ合わされる。外界としばし隔離された劇場の、そんなかんじに特別な音色を聞く思いがする。それはもうスペクタクル。その日の興行の内容をも大きく包みこんでいる空気感を味わうのが好き。

J**のブティックを訪れた時、その昔の思いつきが頭をよぎった。そこはブティックというよりも劇場のよう。部屋は薄暗い小さな重厚な箱、ショーケースは一切なく机と椅子が置かれている。机の上に光が灯り、劇場内のごとき部屋をわずかに照らす。そしてお客様が来場し、幕が上がる。奥から次々にビジューが現れ、スポットを浴びてキラリ、深い陰を伴って浮かび上がる。お客のため息が聞こえる「マ•ニ•フィック…」。机を舞台にきらびやかなスペクタクルのはじまりはじまり…。

でも実はこのJ***のスペクタクル、頭の中にあるだけでまだ見た事は無い。私はお客ではなく舞台裏に訪れただけだから。暗くて埃っぽい、薄汚れたような壁の部屋は、まさに幕が開く前の白々した劇場の空気を持っている。机の上の照明はまだ点かず、隣の部屋から開いたままの扉ごしに無造作に光が差し込むのみ。机の隅っこに鉱物の原石や珊瑚。そして、このさら奥にも部屋があるようだが、扉はいつも開かずじまいで中はわからない。やはりビジュー達の控え室なのだろうか?

それでもやはり想像力は掻き立てられ、勝手に展開したスペクタクルは夢のような…そのまま幻想の世界。それだけ、J**のビジューは詩的な響きに満ちている。

ちなみにこの世界の要を奏でている旋律は、ここからとても近い所から、ここよりもっとはっきりと聞こえて来るのだが、なぜかそんなものは無い事になっている。”すごいのは一人”との演出なんだな。とにかくJ***J**、top top

プチフランス語講座:
le spéctacle[スペクタクル](光景、興行、演出)、magnifique[マニフィック](素晴らしい)


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