『アイデアは誰の物?』

プロフェッショナルな世界のこと4〜デザイン登録あれこれ

V** C***のジュエリーと言えば、お花の形のチャーム、貝がキラキラ虹色に光るかわいいやつ。また、このお花のシンボルからつい想像するのは、V*****の超有名モノグラムシリーズの鞄の模様。最近ではこの模様をチャームにしたアクセサリーも雑誌で良く見かける。どちらもブランドを代表するアイコンだけれど、これらはなんだか似ている。

こんなふうにデザインがシンプルだと似ることは多々ある。そうなってくると問題なのは、どっちのが、どっちのに似てるのか。V**C***とV******の例はあくまで例にすぎないし、そもそも似てないかもしれない。だから、それはここではどちらでも良い。でも、昔から方々で使われているシンプルなシンボルを、誰かが自分のものだと言い出したら怖い。シンボルはブランドのアイコンになって会社の売り上げに多く貢献するし、ブランドイメージを左右するから「勝手なことをするな」と言いたくなるのもわからないでもない。そのままにコピーして儲けようとする輩が多すぎるのも確かだ。

ビジューのデザイン登録についてアトリエで周りに意見を聞いてみたことがある。皆どうしているのか、した方がいいのか。丁度、デザインを巡る裁判の話題も出ていた。

その頃、大きな所が小さな所をデザインコピーに関する問題で訴える出来事があったよう。興味深かったのは、コピーでは無い事を主張するための資料に、江戸時代の日本の物の写真が用意されていた事。実は双方がこの日本物にそっくりなのだとか。思わず笑ってしまう。江戸時代というと、その大きな所がまだ創設されていない時代だ。

どういう事情で裁判沙汰に発展したのか知らないし、結局どうなったのか知らない。どれがどれに似ているのかも見ていない。でもこの話には多いに不安にさせられたし、面白くないと心底思った。こういう話題に個人のビジュークリエイターが敏感に反応しても当然だろう。私はビジューティエとして働くと同時にクレアトリスとしての自負がある。

結局、デザイン登録に関して皆から返って来た返事を総合すると、登録は裁判沙汰になった時のためで、攻撃に使うか、又は守りに使うかどちらかになる。すぐに考え得るのは、大きな所から攻撃されるような事態。そんな事になれば守らないといけないのは必死。だから登録してあると役に立つし心強い。逆にもしかして、ビジューが大いに成功してコピーが出回るような事態が発生したとしたら、またデザインをそっくり横取りされたら。その時に黙ったままでいるつもりかどうか。それくらいのことと言う見解だった。

そこで話を自分に引きつけて考えてみると、まずコピーして楽に儲けようなんて気はさらさらないが、それでも守りは有っていい。しかし、誰かを訴えるなんてことがあるのか疑問が湧いた。そんなこと考えたくないし、気持ちが良くない。

それから、話は少々脱線するかもしれないが、そもそもアイデアとは神聖な所にあり共有財産でもあるかんじがする。それを皆が使える形に変えるために一時期預かるイメージだ。だからアイデアや、それから発展した物も含めて、それらが自分に所属するものとして主張する事はどこか正しい行為な気がしない。理論的には。でも、アイデアを取り出してこの世に出現させるためにはそれなりのエネルギーが必要だ。人生や全財産を懸ける場合だってあるし、そんなことが実際ほんの身近にある。それは尊敬されるべきだと主張したいし、なにより心情的にそっくりそのままにコピーされたら絶対に腹が立つだろう。

結論、やっぱり攻撃だってしないといけない。

アイデアからデザインへ、そしてシンボルやアイコンへと昇華させると手放したくなくなる。そしてそのための代価は高くなる。登録料も高くなる。

プチフランス語講座:
la idée[イデ](アイデア)、le dessin[デッサン](デザイン/デッサン)、le icône[イコン](アイコン)
la nacre[ナックル](貝殻内部の真珠層)


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