『ガレットデロワ』

季節の風物詩1〜大人も子供も盛り上がる

一月の風物詩はお菓子のgalette des rois『ガレットデロワ』。

お正月明け、街中のパン屋さんにいろいろな大きさのガレットが所狭しと並べられる。紙で出来た金色の王冠のデコレーションが存在感を発揮する。またガレットの季節が来たなとしみじみ、ガレットデロワはアーモンドの練り物が入ったパイ。皆で切り分けて食べる。中に陶器の小像、フェーブが隠してあり、宛てがわれた分にそれが入っているとその場の王様になるという趣向付き。人数に合う大きさのを用意し、学校で仕事場で家庭でといろんな所でいただく。

お待ちかねのでデザートの時間、子供はうれしそうにテーブルの下へ潜り込む。ん?こうやってケーキが見えないようにしてから、切り分けたのが誰の物か指定するの。なるほど。「これは誰の?」「それはママの」「じゃあこれは?」「僕の!」そしてなぜか”僕”のや”私”のにフェーブが入っている。
だからこんな愉快な日には、どうぞいたずらをして両親に怒られないようにして欲しい。じゃないとデザートが罰としてお預けになってしまう。”デザート無しですよ!”フランスではこうやって両親は子供を躾けるのだ。でもそうなったら大人だってがっかりだ。

ガレットを食べて自分のケーキにフェーブが入っていたら、王様なので冠をかぶって直ちに命令しよう。「パトロン、月給の支払額の末尾にゼロを一つ増やしなさい。」そうしたら、田舎に大きな庭の付いた家を買う。

ガレットは皮はパリパリ、中はしっとりが美味しい。毎年、その年のガレットベスト1とワースト1が選ばれる。日本でもフランスでも有名なパン屋P***がワースト1に選ばれてた年もあったかな…。

お味は重要だけど、それはさておき興味津々なのはフェーブの方。せっかく手元に来たフェーブ、お口の中で発見するかもしれないが、こってり系の餡がしっかり貼付いているのでそれをこそぎ取って、そして良く見てがっかり。あるいは、とっても素敵で「ワー」なんて周りから歓声もあがり、でもどこかからか「妻がコレクショナーなんだ」なんてのも現れて欲しいとせがまれる。

もし私がフェーブのデザインをするなら、…大好きな椿の花をモチーフに、色とりどりでキッチュ、シンボリックでエキゾチックなフェーブを提案する。真っ赤な一重の薮椿、ピンク地に白い絞りの八重、筒芯の黄色が映えるまあるい白椿…フランス人マダムも「カメリアジャポネ!」なんてうっとり夢中になるはず…もちろんかわいいアクセとしても使えるように紐を通す穴もつけるつもり。
…それから、そう!別のアイデアも浮かんだ!肌の色や、目の色、髪の色の違ういろんな赤ちゃんモチーフのフェーブもかわいい!バラ色の頬に明るい緑茶色の目の男の子、褐色の肌に丸いちいさな鼻、眠っている女の子…
そして…そして、これ以上は本当に依頼されてから続けるとにしましょう。例えばLADUREEとかに!パティシエLADUREEは様々な分野のデザイナーとのコラボレーションでいつも楽しませてくれている。最近ではラクロワ、ルブタン、マルニ、セファラ。

それからビジューティエとして見逃せない話の種は、新しいタイプの特別なフェーブについて。クラッシックなフェーブは陶器製、でも最近では金属製フェーブの入ったガレットデロワが売れ出されて、”ダイヤモンドのフェーブ”なんていうのも話題になった。でも実はフェーブがダイヤモンドの引換券になっていただけでダイヤがお菓子の中に入っているのでは無かった。「なんだ、夢のない」とがっかりしたもんだけど、そんなことならいっそ、本当にダイヤモンドジュエリーを入れたとびきりLUXなガレットデロワがあっていい。本末転倒の発想ではあるけれど、本物のジュエリーがフェーブに変身すればストーリが出来て面白い。フェーブが先でもジュエリーが先でも、どちらにしても大切なのは遊び心。
また金属製フェーブなら、金の板にマリア様のようなクラッシックなモチーフをサラリと彫ったものはどうだろう。適度な伝統との距離感は道楽をも上品な趣向に仕立ててくれる。シックなパーティーに。

ちなみに、最後の最後になってしまったが、このガレットデロワ、そもそもの由来はさかのぼることクリスマス。キリスト生誕にあたり3人の王様 ”東方の三博士” が贈り物をもってお祝いに駆けつけた事に端を発する宗教行事なのだ。皆パイを食べてこの行事を楽しむわりに、その背景についてあまり知らないのだけれど。

プチフランス語講座:le camélia[カメリア](椿)


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