『何でもありの迷宮』

プロフェッショナルな世界のこと6〜バンドームの謎

Place Vendôme、プラスバンドームはビジューの世界的な中心地。パリのど真ん中に位置し、有名どころメゾンのブティックが軒を連ねるこじんまりした四角い広場。

そのバンドームのすぐ横に郵便局があり、便利なのでたまに利用する。働くアトリエが広場にほど近く、お昼休みの間に手紙や小包を出しに行く。でも、ついでだからといってウインドーを見ていると、お弁当を食べる時間が無くなってしまう。だから広場を一気に横切って行く。その時肌に感じるのは、バンドーム広場のミステリアスな空気感。吹き抜ける風と歩くと、広場に重ねて存在している別次元の世界へ行ける気がする。

…広場の中央には、目に見えないガラス張りの迷宮がある。迷宮は部屋や通路が入り組んだ迷路のような建物。ラビリンスといえばギリシャ神話の中でミノタウルスが閉じ込められていた。心の目に映る迷宮の壁をたくさんのツーリストがすり抜けて行くのだが、私にはむしろ彼らの方が透けて見えてくるから不思議だ。何も無いはずの所の、空気の密度がやけに濃い。

関わる人の憧れや思い入れをたっぷり吸い込んで、白昼夢をみせるバンドーム広場だが、働くのは生身の人間。私と同じく、怠け者で適当で文句ばっかり行って、次のバカンスを指折り数えてる。

現実の世界でお昼ご飯を食べ終わると、生のバンドーム白昼悪夢を見る事が出来る。やはり謎に満ちていて、どうしたらそうなるのか理解できない、筋のおかしな話が満載。品番は消え、文字が逃げる。計画はゲームのごとき、ルールは不明。

バンドームの世界にはラビリンスの現実が混ざり込んでいる。


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